『キッチン』吉本ばなな

近所にできた小さな本屋nui booksの、店頭のワゴンセールで買った小さな文庫本の表題作「キッチン」を読み終えた。

 

作者はこれまた近所に住んでいる気がする。いい小説だった。というよりこの小説を読むことができてよかったと思う。

 

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その柔らかく骨太な終わり方に歩む膝小僧を前に前に進めたくなる私はまだまだみかげのようにありふれた力強さを小脇に抱えて生きていくことはできなそうだけれど。

 

キッチンは、思えば私にとっては二人の料理好きな友人のおかげでゼロ距離からだいぶ近い存在になったと思っている。起き抜けにコンタクトレンズを付けない視力0.01以下の私が無心でシャワーを浴びて家の中を練り歩くくらい、台所をキッチンを縦横無尽に無心で操って、たいせつな人の喜ぶ料理を作る毎日を過ごしたいと、そういう誰にも邪魔されることのない強力な幸福というものが、そこにはある。もしバーカウンターを作るならキッチンはカウンターのすぐ真下、お客さんのすぐそばに備え付けたい。設えにも当然だが、使い方にはもっと個性が出る。と、先の二人の友人を見ていて思うところ。洗い物がすきだ。それくらいしか早く確実にできることがまだ私にはないから。どんな設えの台所であってもなるべく100%に近い私の持てる力の発揮できる私でありたいし、それ以前にまず、彼ら二人の友人に負けないくらいいつの日か台所との多くの多くの回路を繋いで、自足できますように。いや、するのだ。筍歴二年目の私なのだ。