鉄の箱のなかで
「金沢文庫」とは変な名前だと思っていたが、どうやら鎌倉時代の武家階級の教育機関に関係しているらしい。
ふと危ない宿命を背負いながら今その内にすっぽりと入ってしまっているブラックボックスの存在を自覚する。その箱の中にいるときには何という為体であろうか。ひたすら今一度の娯楽に興じようと促してくれるその部屋のことを、内側からただその景色を見やることすら諦めている鉄道のドア越しに思いやった。
「期待」という言葉は諦念が側にある者が発する以外には、虚しく響くばかりとは、米澤穂信『クドリャフカの順番』に教訓めいて語られていた。「努力」は未だそれの足りない者が使うんだろう。
なるべく鉄の箱に気付かれないように日々と場所を横断しながら、ブラックボックスにのみこまれないうちに外へ出よう。
ひとりの夜は
声が聴きたい
飛び乗る電車 会いにいく
デスクワークも
ご機嫌とりも
投げ出してこう
夢の国へ 行ってみたい
愛を知る Have a nice day
(Have a nice day! /LUCKY OLD SUN)